岩壁の端にマイクが一本立っています。
髪の毛を立てた男の人が、険しいお顔でそのマイクをにらみ付けています。
辺りは不思議と白いのです。
どこかのスタジオだと思いますか、でもそれだけは断じて違うのです。
よく観ますと、ようやくひとりの観客を見つけることが出来ました。
観客は、岩壁の端から垂らしてあるロープにぎりぎりのところでぶら下がっていました。
観客は言いました。
「あのマイクロフォンは、とても性能がよいマイクロフォンです。
あなたにそれを説明してあげましょうが、私自身もその説明を忘れてしまったのです」
男の人は、楽器のギターを持っていました。
私は彼のちょうど正面にいますので、
うまい具合にギターの先の方しか見えなくなりました。
観客はああして何時間もぶら下がっているはずですが、
なぜか疲れた様子はありません。
また観客は言いました。
「私は、電気の大学へ行っていたこともあるのです」
それよりもっと私が驚いたのは、なんとロープの色が緑色だったのです!
(本当は、とても速いんですよ。ここでは。)
私は不思議に思ったので、男の人の横に廻ってみることにしました。
いよいよ始まってしまったのです。
ついに始まりました。
男は、腰を右へ振りますならば、首を左に曲げましょうと考えているでしょう。
かまわずに私は横に廻るでしょう。
男は激しく前かがみになり、髪の毛がとてもおかしな具合でした。
左手の手首を一所懸命、前に出しました。
私は、うるさい音を聴きました。
聴いてしまいました。
もうこうなっては止められそうもありませんし、
ここでお弁当でも食ってやろうかと考えました。
そして、観客は落ちました。