[ 2007年10月 アーカイブ ]


私の知人がある晴れた日に新宿御苑を散歩していたときのことです。
祭日なので散歩人も多いです。
でも東京の人たちは散歩してても歩くスピードは速いようです。
私の知人が言うのですから間違いありません。
「つーかはええ……」
私の知人はたいそう驚きました。
でも本当の驚きはこれからでした。
それは新宿御苑を少し歩いてからのことでした。
作業員が二人いて、なにやら、悩んでいました。
聞くと、これから新宿御苑に自由の女神像をたてるんだと言いました。
私の知人は少し、疑いましたが信じました。
「よし、手伝おう!」
すこし、腕もまくりました。
足もまくろうとしましたが、亡くなった父親の職業を思い出すのでやめときました。
いつの間にかギャラリーが増えていました。
私の知人はあまり気にしませんでした。でもこれが間違えだったのかもしれません。
私の知人が言うのですから間違いはありません。
一人の作業員は聞きました。
「ガムテかクギか」
私の知人は少し迷いました。疑問系なのか?そのままなのか?独り言なのか?コロ助なのか?
ギャラリーを少し見回しました。
「ガムテだろ」
または
「いや、クギだろ」
「いやいや、ガムテかクギだろ」
いろいろな意見がありましたが私の知人は決断を迫られたようでした。
「じゃ、ガムテにします」
少しの間、シンとなり、「あーあ」とあちらこちらでため息が漏れ、ギャラリーは去っていきました。
作業員も行ってしまいました。
明日は、駒沢公園でやるというのでまた行ってみようと思います。
そのときは友人でも誘っていって見ようと思います。
これが私の知人の体験談です。
私の知人が言うのですから間違いはありません。

その日はとてもよく晴れた日で雨が降っていた。
日向晴彦は毎朝天気予報は欠かさず見てから家を出るようにしている。
腹が立っていた。
天気予報は降水確率0%。しかし現に今、太陽はかんかんに照っている。
いわゆる天気雨である。
氷雨美雪は毎朝『石井健吾の朝から一発』を聞く事を欠かさない。
腹が立っていた。
「いしけん」、美雪は石井健吾のことをこう呼んでいた。
いしけんは、今日の天気予報ははずれるから傘持ってって。と言った。
そこまでは良かった。
「でも、僕の言うこと聞くとお漏らしするよ」
と、付け加えた。
頭にきていた。ふたりとも。
もう二度といしけんなんか聞くもんか、と思った。
この、やり場のない思いは、むかむかファンクラブで。
私は残業も終えて帰路に着いていた。電車を降り、死ぬほど通ったはずの細い路地をとぼとぼ歩いては、やはり死ほど曲がったはずの曲がり角を曲がる。さすがにこの時間になると人影も少なくなるというものだ、などとぼんやり考える。そういえば、最近彼女とも会っていないな、などの考えも平行している。ただのひとりが、ただ部屋に帰るためだけに歩くとは、ひどく考えも散漫なものだ。
さて、あと2、3分も歩けば俺の部屋か、と思ったとき私はふと立ち止まった。
「あれっ?こんなところに、こんな建物、あったけ?」
それは、マンションとマンションの間に、ちょうど挟まれるようにして建っていた。その場所でさえ、毎日死ぬほど通り潰して、見える光景の全ては理解しているはずである。すると最近建ったばかり、ということか。しかし、それならそれで何かしらの変化にこそ気がついても良いものである。まるで、突如沸き出たようで不気味だ。
そして、何より私を不気味にさせたのはその色だ。ファッション・ピンクなのだ。
「マジか…?」
漆黒の中、淡い照明はその建物だけを照らしている。それはまた同時にワイセツな営業を営む店を連想させた。もっとも、私はそうゆうとこに行ったことはないのだが。
ここでまっすぐ帰ればよかったものの、しかし次に私はその建物へと歩み寄っていたのだ。
「めるへんはうす…うさぎ…?」
これはいよいよ想像に答えるに値してるなと苦笑してみたが、内心ではおおいに期待しほくそ笑んでいた。家の近くにこんなものがあったとは、どうして今まで気がつかなかったものか。まあ、何はともあれものは試しという節もある。
「それでは…」
と、扉を開けると
「きゃぁーん!あなたも魔法の力でぶりぶりよん」
いきなり中から誰かが責めよってきたので思わず仰天してしまった。
「あの…、ここは?」
「いやーん、わたしの魔法でるりるりよん!」
さすがに驚かずにいられなかった。きっとこの人は、あれ(クスリ)をやってるに違いない。
そしてこんなところにいたらきっと、ひげぼーぼーになってしまうに違いない。帰ろう。
「あっ、すいません、間違えました」
言ってすぐ帰ろうとしたとたん、この人は泣き出してしまった。あれ(クスリ)をやってる人は喜怒哀楽が激しくなると聞いたことがあるがまさにその通りだ。
「あれっ、困ちゃっうなぁ、泣かれても…」
「……ん、でも、だいじょうぶ!魔法(クスリ)の力でぷりぷりよん!」
ああなんて恐ろしいんだ!しかし、よくよく見てみればなんと可愛い娘さんではないか!
「あの、その、失礼ですけど、ここは何をやってるところなんですか?」
「せっしゃは、武士で、ござる、ナリィー」
彼女はせいいっぱい第一印象を良くしようとしてモノマネをしてきた。それも、いまさら武士のモノマネだった。しかも後半は、よせばいいのにコロ助も入っていた。
「そっ、それつまんね……」私は心の中で何度もそう叫んでいた。きっとこのとき私の顔はひどく引きつっていたはずだ。しかし次にはそんな思いとは裏腹に私はとんでもない事を口にしていた。
「きみ、おもしろいね」
ああ、私は何を言っているのだろう。一刻も早くここから抜け出さなくては行けないはずなのに。さてはこの娘に一目惚れでもしてしまったのだろうか?
それからうさぎと打ち解けるのに時間はかからなかった。
実にいろいろな話をした。子供のころのこと、ふるさとのこと、将来のこと、コロ助のこと。彼女は大いに笑い大いに泣き、こんな私に対して実に親身になってくれた。もう私は決心しなければならないと自分自信に言い聞かせた。こんないい女は他にはいない。
「さっきも言ったけと思うけど、最近さ、彼女とうまくいってなくて…もう、別れよう、って思ってたんだ…それで…」
「それで?」
「俺と付き合ってくれないかな!……いや、今日会ったばっかりで、俺、こんなこと言うの、おかしいんだけど」
「彼女とうまくいってないの?」
「とぼけないでくれよ!何度もそう言って…分かったよ、いやならいやってはっきり言ってくれよ!」
「まあそれ、おれも一枚かんでるけどね」
「え?にいさん?」
「にいさんゆーな」
それからの私はまるで夢を見ているようだった。どうにか成り行きぐらいは理解できるようになってからしばらくして、もういち度『めるへんはうす・うさぎ』を訪れてみた。事の真相をどうしても確かめたかったからだ。しかし、私を待っていたのは残酷とも言える、悲しい結末だった。
『めるへんはうす・うさぎ』があるはずの場所には何もなく、ただ短い草だけが埋め尽くす土地が広がるばかりだった。
「うさぎ……」たたずむ私をただ、うさぎと過ごした想い出だけが通りすぎていた。呆然としていた私だったが、この時この発見によって随分救われた事になった。それはうさぎからの手紙だった。
私はもう二度と恋はしないなんて言わないよ絶対、と牧原ノリユキ張りに思う。以下はうさぎからの手紙の全文である。最後にこれを載せることで私の体験談、あえて言うならラヴソングを飾るとしようか。
『前略
あなたはきっとこの手紙を読んでくれると信じています。
辛いことも、悲しいこともあったけど、それでもわたしは生きていきます。
わたしは、にっぽんいちの武士になります。最悪コロ助になります。
かしこ』